ゲーム・チェンジャーってもう見た?
もちろん!考え方を180度変えてくれた作品だよ。
健康に興味のある人なら、Nextflixで『ゲーム・チェンジャー(The Game Changers)』というドキュメンタリー映画を見たかもしれません。
『ゲーム・チェンジャー(The Game Changers)』は、スポーツ選手などのアスリートがプラントベースの食事法を実践することによって、
どのような利点があるのかを解説したドキュメンタリー映画。
この映画に用いられているデータの引用元はほとんどが信頼できるものですが、
全体的にヴィーガニズムを褒め称えすぎだという批判も出ています。
確かに、プラントベースダイエットのデメリットをあまり話していないよね。
偏っていると言われても仕方がないかもね。
そこで今回は、様々な最新の研究論文を引用しながら、その真偽を検証してみたいと思います。
こんな疑問を解決します。
- ゲームチェンジャーの理論は正しい?
- 菜食でも十分なタンパク質は摂取できる?
- 人間は草食動物?肉食動物?
この映画は筆者がヴィーガンになるきっかけをくれたものですが、
今回は思い切ってニュートラルな視点で客観的に書いていきたいと思います。
映画を見たけど、ヴィーガンやベジタリアンになるには栄養面が心配…。
そんな人には是非最後まで目を通してみてほしいな。
『ゲーム・チェンジャー(The Game Changers)』の中の正しい説
プラントベースの食事でも必要量のタンパク質を摂取できる
植物性のプラントベースダイエットをしていたとしても、きちんと勉強さえしていれば、9つの必須アミノ酸をバランスよく摂取することが可能です。
これは、動物性のものを摂取する場合と比較しても、全く問題がないことが分かっています。
しかし注意しなければならないのは、適当に野菜を食べていればよいということではないということ。
植物だけではタンパク質が全然足りないイメージだった!
理論上は十分可能だけど、気を付ける点がいくつかあるよ。
植物性たんぱく質は不完全と言われていますが、これは、すべてのアミノ酸を一口で摂取することはできないということ。
したがって、ナッツ、種子、全粒穀物をバランスよく食事に取り入れる必要があります。(論文1)
肉ばかり食べているともちろん病気になりますが、野菜だけひたすら食べれば良いわけではありません。
たんぱく質についてはこちら。
ヴィーガンはビタミンB12を摂取可能
ビタミンB12は、ヴィーガンが唯一食事から十分な量を摂取できない栄養素。
ヴィーガンにとって最も摂取することが困難と言われているビタミンB12は、様々な方法で食事に取り入れることができます。
しかし、気を付けなければいけないのは事実。(論文2)
通常家畜にはビタミンB12のサプリメントを飲ませるため、サプリメントを飲んだ家畜動物を人間が食べることで、ビタミンB12を摂取します。
そのため肉を食べないヴィーガンやベジタリアンはビタミンB12が不足するというわけです。
微量ですが、ビタミンB12を摂取する方法はいくつかあります。
例えば、
・オーガニックの野菜
・ニュートリショナルイースト(栄養酵母)
・野菜の酵素漬け物など植物性発酵食品
・コンブチャ
・湧き水
・海苔
・サプリメント
海苔などの海藻にもビタミンB12が含まれていますが、量が明らかに少ないのです。
そもそも昔の人は、消毒されていない水や、農薬のついていない野菜からビタミンB12を摂取していた。
現代では肉を食べているとしても、ほとんどの人がビタミンB12不足と言われています。
プラントベースの食事では、十分な量を食事から摂取することは困難とされています。
サプリを使用するのが最も効果的との見解が一般的です。
ビタミンB12サプリはこちら。
続けやすいスプレータイプはこちら。
ヴィーガンは必要量の鉄分を摂取可能
鉄分が不足すると貧血になるっていうよね。
実は私はヴィーガンになってから貧血が治ったんだよ。
肉を食べないと貧血になるんじゃない?と多くの人が思っていますよね。
私もそう信じていました。なぜなら元々ひどい貧血に悩まされていたから。
鉄分に関しては、人一倍心配をしていました。
しかし、いざ肉をやめてみると、貧血がピタッと治ったんです。
筆者がヴィーガンになって貧血を直したストーリーはこちら。
医学研究所の食品栄養委員会(FNB)によると、菜食主義者の場合1.8倍の鉄が必要。
ヘム鉄を摂取しない菜食主義者は、そうでない人に比べ鉄分が不足する傾向にあることが分かっています。
しかし、驚くことに菜食主義者の貧血率は低いんです。
プラントベース食生活に関してアメリカ栄養士協会は次のように述べています。
「ベジタリアン(男女含む)の鉄欠乏性貧血の割合は、非ベジタリアンのとほぼ変わらない。 菜食主義者の成人は非菜食主義者よりも鉄の貯蔵量が少ないが、彼らの血清フェリチンレベルは一般的に正常範囲内である」
(参考論文: 研究3、研究4、研究5、研究6、研究7)
血清フェリチンとは、鉄不足を発見するための検査項目。
菜食主義者の場合、貯蔵鉄は欠乏しているのに、ヘモグロビンの値が正常な場合(貧血でない)が多いんだとか。
むしろ菜食でない人の方が、鉄不足の人が多いというのだからびっくり。
つまり、「鉄分が足りていない=貧血」という単純な話ではないんだね。
プラントベースの食事を実践する場合は、レンズ豆や葉菜類をたくさん食べるべきと言われています。(論文3、4)
またビタミンB12をしっかりと摂取することも、鉄分不足には欠かせません。
さらに、鉄分はビタミンCと一緒に摂取することで吸収力が67%も上がります。
日ごろから大量のビタミンCを摂取しているヴィーガンやベジタリアンにとって、実は鉄分を摂取することは実はそれほど難しくはないのです。
プラントベースの食事は心臓病やあらゆる癌、糖尿病を予防する
肉食が現代の生活習慣病である心臓病、糖尿病、様々な癌を引き起こすことは、映画の中で大きく取り上げられていました。
この説に関しては、世界保健機関(WHO)の研究機関である、国際がん研究組織(IARC)が発表しています。
日本の国立がん研究センターが日本語で分かりやすく解説してくれていますよ。
要約するとこんな感じ。
毎日50gの加工肉(ソーセージなら3本、ハムなら5枚、薄切りベーコンなら3枚程度)を食べると、大腸がんになるリスクが18%増加する。
加工肉を食べることによる発がん性のリスク評価は5段階で最も高いレベルとし、消費者に食べ過ぎないよう警告しています。
最近では、世界中で認識されてきている事実なんだ。
さらに、ある長期的な研究によると、ヴィーガン食はあらゆる種類の癌のリスクを15%減少させる可能性がありることが分かっています。
これは、『ゲーム・チェンジャー(The Game Changers)』にみられる主張と完全に一致していますよね。(論文15)
映画では「赤身の肉が危険」と言っていますが、正しくは「赤身の肉を含むベーコン、ソーセージ、デリミートなどの加工肉」が乳がんや結腸がんなどの特定のがんのリスクの増加に関連しています。(論文16、17)
人間の体は草食動物に近い
『ゲーム・チェンジャー(The Game Changers)』では、人間には肉を食べるのに適した歯や消化管がなく、すべての人が歴史的に主に植物ベースの食事をしてきたと説明しています。
これは、正しくもあり、逆説もあります。
人間は雑食動物じゃないの?
コーネル大学の名誉教授で「The China Study」の著者であるT.コリンキャンベル博士は、
「歴史的にみると人間が肉食を始めたのはつい最近の事だ」
とコメントしています。
Physicians Committee for Responsible Medicine会長のニール・バーナード博士は自身の著書の中で、
「初期の人類は他の霊長類と非常によく似た食事(プラントベース)をしていました。 研究によると人間の肉食の歴史は、肉食動物が残した残り物を食べることから始まったもの。しかし、私たちの体は未だに肉食に適応しておらず、肉食が心臓病、癌、糖尿病、およびその他の病気を引き起こすことが分かっている。」
と書いています。
上記の証言からも分かる通り、類人猿の約2000万年の進化系統は著しく草食性です。
人間の消化器官、栄養素の必要量、代謝などの生理機能は、他の類人猿や草食動物とほとんど変わりなく、人類は約15万年の歴史の大部分を、ベジタリアンとして過ごしてきました。
逆説として、狩猟採集民であるタンザニアとケニアのマサイ族は、ほぼ動物ベースで飽和脂肪の多い食事を中心に行っていたことが分かっています。(論文18)
人間が肉食動物・草食動物どちらに近いかについてはこちら。
日本の伝統的な沖縄の食事は主に植物ベースで、サツマイモのでんぷんが多く、肉が少ないという研究もあります。(論文19)
沖縄の伝統的な食事についてはこちら。
『ゲーム・チェンジャー(The Game Changers)』の中の怪しい説
研究バイアス
この映画が批判される最大の理由は、「研究バイアス」。
研究バイアスって何?
明らかにしたい真の結果を誤らせる要因。「偏り」と訳されるよ。
ヴィーガニズムをとことんほめて、肉食のメリットについて全く触れていないため、
いくら信憑性のある情報を用いていたとしても、偏った説明になってしまうんですね。
また、小規模であまり意味のなさそうな研究を誇張しすぎている点も問題です。
例えば、大学のサッカー選手が肉を食べた後の夜間の勃起を測定する研究は非科学的でした。
さらに、この映画では全米肉牛生産者協会が偏った食肉研究に資金を提供していると非難しています。
それは紛れもない事実ですが、実は大豆栄養研究所などのプラントベースの組織も同様に、利益相反を行っていることが確認されています。(論文7)
オールオアナッシングアプローチ(All or Nothing Approach)
上記の研究バイアスとも重複する部分がありますが、映画内では「ヴィーガン=正しい、肉食=悪」と断言しすぎているところがあります。
「ゲームチェンジャー」は、赤身の肉や加工肉を非難するだけでなく、鶏肉、魚、卵などの動物性タンパク質も同様に健康に悪いと主張しています。
この説が間違っているわけではありません。
しかし、鶏肉、魚、卵などにはいくつかのメリットも存在します。
つまり、相対的にみると、良いか悪いかは結論づけられない。
すべての動物性食品を制限するわけではない、ベジタリアン食の健康上の利点を発表している研究も数多くあります。(論文8、9)
アスリート目線である
『ゲーム・チェンジャー(The Game Changers)』はアスリートに焦点を当てたドキュメンタリー映画。
そのため、普段からハードなトレーニングを行っている人などにとっては大変有益な情報かもしれません。
映画では、ヴィーガン食がいかに簡単であるかが謳われていますが、実際アスリートたちには専属のトレーナー、栄養士、医師、パーソナルシェフなどが栄養を管理します。
しかしそれら外部の専門家を雇わない一般人は、自分で栄養についてある程度勉強し、自分で献立を考える必要があります。
それによって一部の栄養が不足したりすることがあるのは、紛れもない事実です。
心臓の健康について
『ゲーム・チェンジャー(The Game Changers)』では、コレステロール値と心臓の健康に対してヴィーガン食がどれほど効果的かについて繰り返し説明しています。
確かに、ヴィーガン食は長い間、総コレステロール値の低下と関連してきました。(論文10、11)
ただし、ヴィーガン食は総コレステロールとLDL(悪玉)コレステロールの低下に関連していますが、HDL(善玉)コレステロールの低下にも関係しており、中性脂肪レベルに影響を与えない可能性があるという研究もあります。(論文12)
また、一部の動物性食品を許可するベジタリアン食は、HDL(善玉)コレステロール値を上昇させ、心臓病のリスクを低下させる可能性があるとの研究もあります。(論文13、14)
しかし、心臓病は肥満などによるコレステロール値が原因と言われていますよね。
実際のところヴィーガンの食事をしていると、コレステロール値なんて気にならないよね。
肉食を正当化するための研究もあるのかもね。
結局どうすればいいの?
自分の体に合う食事法を見つける
結局のところ、プラントベースの食事が体質に合う人もいれば、全く合わない人もいます。
私は昔からずっと菜食じゃないと体の調子が悪かった。
私は野菜ばかり食べすぎるとお腹を下すんだ。
自分の体に合う食事法を見つけることは、簡単ではありません。
体の声を聞くのも大事ですが、具体的なデータを出してみて、客観的に分析してみるのが良いでしょう。
血液検査や、DNA検査がおすすめです。
植物性プロテイン
現代人のほとんどがタンパク質不足だと言われています。
最近ではスポーツをしない人でも、プロテインパウダーなどでタンパク質を補うことが増えてきました。
でもホエイプロテインだとお腹が緩くなるんだよね…。
ホエイプロテインには日本人が消化吸収できない成分が入っていて、体質に合わない人が多いんだ。
ホエイプロテインは、手軽にタンパク質が摂取できて、コストパフォーマンスが良いですよね。
しかし牛乳由来のホエイプロテインには、日本人のほとんどが消化吸収できない乳糖(ラクトース)という成分が含まれています。
アジア人の90%は、牛乳を吸収するための酵素(ラクターゼ)を腸の中に備えていません。
日本人は日常的に大豆を食べているから、大豆以外がいいんだけど…。
私はこのプロテイン飲んでるよ。ソイフリーだから安心。
食事スタイルを変える時は無理をしない
慣れ親しんだ食事スタイルを急に変えるのは簡単ではありません。
自分に合った方法で、少しずつ変えていくようにしましょう。
まずはプラントベースの食事を好きになるところから始めるといいよ。
急な変化で体調崩しちゃったら本末転倒だもんね。
まとめ
植物ベースの食事と雑食性の食事は、運動パフォーマンスに関しては同等の立場にあるという研究もあるほど、白黒つけることは難しいと言えます。(論文20)
しかし、プラントベースにしてから運動パフォーマンスが上がったという人は、実際にとても多いです。
逆に、疲れやすくなったという人もいます。
相対的にみて、プラントベースの食事が運動パフォーマンスを上げるというのは正しくもあり、逆説も一部ある。
結局、良いか悪いかなんて一概には言えないってことだね。
人によって体質も食事内容も全然違うもんね。
このブログでは、ヴィーガンの思想や健康面に関する情報を発信しています。
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